禁煙外来


喫煙者の70%は「ニコチン依存症」といわれ喫煙習慣からの決別はとても困難です。

お医者さんのアドバイスと新しい治療法で禁煙の成功率が高まります。

一定の要件を満たせば保険診療で禁煙治療が受けられます。

初回はニコチン依存症の診断のため30分ほどお時間をいただきます。

※うつ状態の方、うつと診断された方には本治療をお勧めできないことがあります。

※完全予約制です。

 

禁煙診療実施科内科 治療責任者 副島薫

 

禁煙外来の診療日 但し、担当者不在のことがあります


タバコの歴史について

タバコの軌跡

近年、喫煙は「ND(ニコチン依存症)」という病気として捉えられるようになり、さまざまな喫煙関連疾患の危険因子であることも明らかになってきたことから、世界的にも禁煙の動きが広まっています。しかし、今では健康に害のあると認識されているタバコが、どうして何百年もの長い間多くの人々に愛される存在であり続けたのでしょうか。タバコのはじまりから、今日までを振り返ってみましょう。

はじまり

「タバコを吸う神」のレリーフタバコは自然界における最大の科の1つ、ナス科タバコ属に分類され、南米アンデス高地で誕生したと考えられます。アメリカ大陸で壮大な都市文明を発達させたマヤ族は、中米で早くからタバコを使用していたことが知られており、メキシコ・チアパス州のパレンケ遺跡には、「タバコを吸う神」のレリーフが刻まれています。マヤ文明が繁栄していたころ、メキシコの中央高地のアステカ族では、タバコは神事祭事の折に神々に捧げる香として、戦勝祈願や予言、占いの折の供物として、病気治療の医薬として用いられたほか、特別な場合に王侯貴族、勇敢な戦士、武装商人、老人らによって喫煙されました。

出会い

15世紀後半、中米のマヤやアステカなど「メソアメリカ」と呼ばれる地で欠かせないものとなったタバコ文化や風習は、コロンブスとの出会いによって、ヨーロッパに伝えられ、さらに世界を巡ることになりました。
黄金の国ジパングを目指して、船を西へ西へと進めたコロンブスは、スペインのパロス港を出て70日目、1492年10月12日に西インド諸島に到着しました。コロンブスは、岸辺に集まった先住民達に帽子やガラス玉を与えました。それに対し、先住民が差し出したものの中に、「香り高い乾燥した草の葉2~3枚」があったのです。これがタバコです。

伝播

16世紀の半ばごろ、ポルトガルのリスボンに駐在していたフランス公使ジャン・ニコはタバコの薬効を確信していました。彼は苗や種子をフランス宮廷に献上して、時の皇太后カトリーヌ・ド・メディシスの頭痛を嗅ぎタバコで治したと言われています。後年、タバコに含まれるアルカロイド物質は、このニコに因んで「ニコチン」と名づけられることになったそうです。
15世紀後半に始まった大航海時代の波は、ついに日本にも及ぶこととなりました。タバコも、ポルトガル人やスペイン人らの手によって、ヨーロッパからアジアの国々へ、そして日本の長崎や鹿児島へもたらされました。

刺激の文化

香辛料、コーヒー、ココア、茶、タバコなど、大航海時代の波に乗って世界中に広まった嗜好の品々には、ある共通するものがあります。それは『刺激』です。その刺激には、人間の味覚や嗅覚に対するものと、中枢神経系に対するものとがあります。コショウ、ナツメグ、チョウジなどはインドやモルッカ諸島から、トウガラシは中南米からヨーロッパにもたらされたものです。コーヒーはエチオピアからアラブの人々を経て、ココアは中米メキシコから、タバコなどとともにヨーロッパに伝わりました。茶は、鎌倉時代に中国から日本に伝わったものを、オランダの東インド会社が輸入したのが最初と言われています。昔から世界各地に存在していた酒が、中枢神経の働きを一時麻痺させるのに対し、コーヒーや茶に含まれるカフェインやニコチンは、中枢神経への軽い刺激によって、心地よい覚醒感や鎮静効果をもたらしました。同じ新大陸の「依存性」の植物でもコカは、もっぱらアンデス高地の先住民のものとのイメージから脱却できなかったのは、タバコとは対照的で興味深いことです。

万能薬

アメリカ先住民にとって、タバコにはさまざまな役割がありましたが、その中でヨーロッパ人が最も感銘を受け、理解しえたのは医薬、万能薬としての側面でした。特にペストの大流行(16世紀後半~17世紀中ごろ)などに対し、医学がそれほど有効な治療法を確立できていなかった時代は、新世界からもたらされた未知の植物であるタバコは、またたく間に万能薬に祭り上げられてしまいました。ひとたび異文化の壁を越えると、タバコは確実に浸透していきました。タバコに含まれるニコチンの依存性が、さまざまな意味で人類を虜にし、タバコの浸透を助けたと言えます。18世紀に入ってもタバコは依然として、医療目的ないしは病気の予防のためという理由に大いに支えられていました。

反タバコ

このように、世界中にタバコが広まり、受け入れられていきましたが、医学者も含めて、当初からタバコの普及に反対する者がいたことも忘れてはなりません。早くからタバコの習慣性が認識されていたこともあり、タバコは万能薬どころか身体に悪いと主張する論者もいたのです。また痰壷の使用など、喫煙の見栄えの悪さを批判する者や火災の危険から反対する者などがありました。さらに異教徒の風習として非難する向きも多く、教皇庁は聖職者のタバコの使用に対して何度も禁令を発しています。

病煙喫

19世紀後半には一種の職業病と考えられていた肺がんは、1930年代に入ると英国や米国、ドイツの学者らによって喫煙との関係が指摘されるようになり、50年代に研究が急速に進展しました。その結果、60年代前半には喫煙と肺がんの因果関係について、英米において公式な報告書が出されるに至ったのです。そして今日では、喫煙は“喫煙病(依存症+喫煙関連疾患)”という全身の病気であると認識されるようになり、治療が必要と判断されています。


タバコについて

タバコの三大有害物質について

ニコチン

ニコチン依存を引き起こす原因物質で、中枢神経系に作用し、少量では興奮作用、大量では鎮静作用を示します。喫煙により、肺から速やかに吸収され全身に広がり、間接的には血管収縮作用ももたらします。また、代謝物は発ガン性が認められています。

タール

フィルターに茶色く付着するいわゆるヤニのようなべっとりしたもので、粒子相の総称です。タールには発ガン物質として有名なベンツピレンをはじめ、アミン類など数十種類の発ガン物質が含まれています。

 一酸化炭素

酸素の180~200倍の結合能でヘモグロビンと結合します。それによって血液の酸素運搬機能が阻害され、組織の酸素欠乏を引き起こします。

 

タバコと疾患

ガン、脳卒中、心筋梗塞、肺気腫、胃潰瘍など喫煙は様々な疾患の危険因子となります。
近年の疫学調査により、喫煙は肺ガンをはじめとする多くのガンを引き起こすことが明らかになっています。またタバコの有害物質は肺から急速に血液中に移行し全身に広がっていくため、呼吸器疾患だけにとどまらず脳卒中、心筋梗塞、慢性気管支炎、歯周病、胃潰瘍、肌の老化までもが喫煙による影響を受ける喫煙関連疾患であることがわかっています。

女性の喫煙

女性が喫煙すると、肌への影響だけではなく、不妊になる危険性、閉経年齢が早くなる、骨粗しょう症になる可能性等多くのリスクが発生します。

女性のための禁煙

タバコはお肌の大敵です
タバコを吸うと美容における多くのデメリットが発生します。肌はくすみ、シミやしわが増えていきます。また、スモーカーズフェイスという喫煙者特有の顔立ちやしわがれ声、口臭や歯・歯肉の着色等も引き起こしてしまいます。若さ、美しさを守るためには、まず禁煙からスタートすることが大切です。

妊娠と喫煙

妊娠中の喫煙の影響は、本人にとどまらず胎児にも影響を与えるという問題も抱えています。妊婦の喫煙によって流・早産、分娩時の異常、胎児の発育障害(低出生体重児等)、SIDS(乳幼児突然死症候群)等、喫煙者本人、胎児ともに様々な危険性が高まることが明らかになっています。

タバコとコスト

1日2箱、1年間タバコを吸うと、(500円×2箱)× 365日 ≒ 365,000円

10年間で約365万円・・・超高級新車1台分!?

ニコチン依存症のむずかしさ

禁煙がむずかしいのは、タバコに含まれるニコチンへの薬物依存である[身体的依存]と喫煙習慣による[心理的依存]の2つの依存を同時に克服していかなくてはならないからです。

ニコチン依存のメカニズム

中脳から大脳辺縁系にいたるドパミン作動性神経を「脳内報酬系」と呼びます。ニコチンや覚醒剤、麻薬等は、脳内報酬系に作用し依存性を示すと考えられています。ニコチンはシナプス前末端のニコチン受容体に結合して、ドパミン等の神経伝達物質を過剰放出します。ニコチンによって脳内報酬系が活性化されると、多幸感・快感・覚醒効果・緊張緩和等、様々な効用を感じるようになります。

タバコをやめるには

ニコチン置換療法(NRT: Nicotine Replacement Therapy)
ニコチン置換療法はニコチンパッチやガム等でニコチンを補給することで、禁煙による離脱症状を緩和しながら禁煙に導く方法です。投与するニコチン量を徐々に減らし、身体的依存を上手に克服し、最終的にニコチン製剤の使用を終了します。

離脱症状と対処法

禁煙すると人によって程度の差はありますが、さまざまな離脱症状(いわゆる禁断症状)がでてきます。これらの症状の多くは、ニコチンに依存していた身体の中から、ニコチンが抜けだすためにみられるものです。

心理的依存の克服

いったん禁煙に成功しても、ちょっとしたきっかけで喫煙を再開することがあります。再びタバコを吸い始めたきっかけを思いだし、その対策を考えてみましょう。

肥満を予防する

禁煙すると、食欲が改善して食事の量が増すため、一時的に体重が増える場合があります。通常、2~3キログラムの増加であるならば、あまり心配することはありません。

主流煙と副流煙

副流煙は主流煙よりも有害です。
タバコの煙には、喫煙者が直接吸い込む「主流煙」と、点火部から立ち上る「副流煙」があります。有害成分は低温の不完全燃焼時により多く発生するため、副流煙は主流煙よりも多量の有害物質を含むことが知られています。
また、喫煙者が吸い込んだ後に吐き出す煙を「呼出煙」と呼び、副流煙と合わせて「環境タバコ煙(ETS:Environmental Tobacco Smoke)」と言います。


お医者さんと禁煙する理由

喫煙者の70%はニコチン依存症

タバコをやめられないのは、あなたの意志の弱さではなく、ニコチンのもつ強い依存性が原因です。
このような喫煙習慣は「ニコチン依存症」といわれ、治療が必要な病気とされています。
病気は意志の力だけで治せるものではありません。禁煙成功のために、「お医者さんと禁煙」を始めませんか? 「ニコチン依存症のチェック-ファイザー株式会社」

 

お医者さんのアドバイスと新しい治療法

お医者さんと禁煙すれば、あなたに合ったアドバイスを受けられるほか、禁煙の治療薬を処方してもらえるので禁煙の成功率が高まります。
新たな治療法として登場した“ニコチンを含まない飲み薬”は、ニコチン切れ症状を軽くするだけでなく、タバコをおいしいと感じにくくする効果を併せもつので、楽に禁煙することができます。

保険診療で禁煙治療

一定の要件を満たすことで、禁煙治療に健康保険等が適用され、あなたの負担も軽くなります。 

健康保険等を使った禁煙治療にかかる費用(自己負担分3割として)は、処方される薬にもよりますが、約3ヵ月で12,000~17,000円程度です。これは、1週間あたりで換算すると約1,000~1,400円となり、毎日20本タバコを吸う方なら、約3~5日分のタバコ代に相当します。


ニコチンを含まない飲み薬

 

ニコチンを含まない飲み薬は、イライラなどのニコチン切れ症状を軽くするほか、タバコをおいしいと感じにくくします。

禁煙スケジュール(通常、12週間)

・1日2回、食後に飲みます。
 ※1日1回から開始し、飲み始めの1週間で徐々に服用量を増やします。 
・飲み始めの1週間はタバコを吸いながら服用し、8日目には禁煙を開始します。
 ※自然にタバコを吸わなくなった場合は、8日目を待たず早めに禁煙に入ります。

長 所

・一定の要件を満たすと健康保険等が適用される
・肌の弱い人でも使用できる(ニコチンパッチを使わないので)
・飲むだけなのでかんたん
・接客などの職種や歯やアゴの問題などで、ガムをかめない人でもだいじょうぶ
・ニコチンを含まない

参考資料に関しては以下を参考にしています。

・日本循環器学会, 日本肺癌学会, 日本癌学会:禁煙治療のための標準手順書 第3版:2008
・厚生労働省:厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究 平成17年度 総括・分担研究報告書
・厚生労働省保険局医療課長通知 診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意項について保医発第0305001号(平成20年3月5日)より改変

表記に関して、

・本web中の健康保険等とは、公的医療保険のことで、組合管掌健康保険、全国健康保険協会管掌 健康保険、船員保険、各種共済組合管掌健康保険、国民健康保険等を指しています。
・タバコ代の記述に関して、1箱300円としています。

その他、 

健康保険等で禁煙治療を受けたい方は、事前に医療機関にお問い合わせいただくか、医療機関検索をする際に、「施設情報」で「保険診療」にチェックを入れて検索してください。また、過去に健康保険等で禁煙治療を受けたことのある方の場合、前回の治療の初回診察日から1年経過しないうちは、自由診療となります。なお、最終的なニコチン依存症の診断は医師が行います。


禁煙治療を受けるには

健康保険等で禁煙治療が受けられる医療機関で受診し、次の要件を全て満たす必要があります(注)

 

①「ニコチン依存症を診断するテスト」で「5点以上」

  

② [1日の平均喫煙本数] × [これまでの喫煙年数] が「200以上」

 

③ 1ヵ月以内に禁煙を始めたいと思っている

 

④ 禁煙治療を受けることに文書で同意している

    ※問診票などに、日付や自分の氏名を書きます

 

(注) 健康保険等で禁煙治療を受けたい方は、事前に医療機関にお問い合わせいただくか、医療機関検索をする際に、保険診療を「希望する」にチェックを入れて検索してください。また、過去に健康保険等で禁煙治療を受けたことのある方の場合、前回の治療の初回診察日から1年経過しないうちは、自由診療となります。なお、最終的なニコチン依存症の診断は医師が行います。

 

厚生労働省保険局医療課長通知 診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意項について保医発第0305001号(平成20年3月5日)より改変


禁煙費用について

代表的な保険適用禁煙治療スケジュールと自己負担額(3割負担として)

① 初回診察時には医師が問診し保険適用の有無を判断します。

  ニコチン依存症管理料の自己負担 ¥630円
② ~ ④回目の診察時は各回ごとに自己負担 ¥552円
⑤ 最終診察時には自己負担 ¥540円

※このほかに初診料、再診療、薬剤処方料、薬局でのお薬代(下記)などが別途かかります

 

内服薬(チャンピックス)による治療-薬剤費のみの自己負担総額 ¥13,860円

(1)初回処方2週分 薬剤費のみ自己負担分 ¥1,860円

 

初日~3日目まで1日1錠服用

4日目まで1日2回(朝・夕)服用

※この間は喫煙可

 

禁煙に入る8日目~2週末まで

(2)2回目以降 2週分 薬剤費のみの自己負担分 ¥2,400円×5回(原則として)

 

3週目~終りまで

 

ただし、禁煙成功となれば12週前に服用不要となります

パッチ薬(ニコチネルTTS)による治療-薬剤費のみの自己負担額 ¥7,300円

原則として 30mg 4週間 薬剤のみの自己負担分 ¥1,900円×2
      20mg 2週間 薬剤のみの自己負担分 ¥1,790円
      10mg 2週間 薬剤のみの自己負担分 ¥1,710円
※普段のタバコの量からミリ数を決定します。ニコチンを含む薬剤です


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